「連続する3つの奇数の和は3の倍数になることを説明せよ。」と真剣に向き合う

風上です。

実は塾で数学を教えるアルバイトをしているのですが、最近は講師は授業中フェイスシールドを付けることを義務付けられるようになりました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 

つい先日の塾のアルバイトで授業をする中で出てきた問題について僕の中で思ったことを整理していきます。

 

問題は記事のタイトルにもあるように

「連続する3つの奇数の和は3の倍数になることを説明せよ。」です。

中学2年数学の序盤、多項式の加減、多項式と単項式の乗除を学んだあとに登場する単元の問題です。実際の問題文には「文字を使って説明せよ」という文言があるとおり、文字を使った説明(証明と言っても差し支えないでしょう)です。

 

塾で用いているテキストの解説(詳しくは書けない)は悪くはないのですが、なんだかテンプレ的書き方を推奨しているようであまり好きにはなれず、ほぼほぼアドリブで自分なりの書き方を教えました。(3,4月に塾で一度授業を行った範囲を、中学の授業開始に合わせてもう一度なぞるという感じだったので、生徒たちは一度テキスト通りの授業を受けています。但しその時教えたのは僕ではありません)

その授業の前置きで僕は、目標は「心の底からその証明が書けること」、と言いました。咄嗟で上手い表現が見つからなかったのですが、まあそういうことです。

 

 

ここから本編

「連続する3つの奇数の和は3の倍数になることを説明せよ。」を解いていきます。

まず問題文を読み解いていきます。

注目する部分ごとに括弧をつけます。

 

『(連続する)3つの奇数の和は{3の倍数}になること』を説明せよ。

 

一つずついきましょう。

『』内はこの問題文で説明することを求められている「ことがら」です。

難しく言えば命題、簡単に言えば主張や事実といえるでしょう。

()内の「連続する」は、ここでは「複数個ある全てのものが『直後の』でひとつなぎにできる」と解釈してください。なので、「連続する3つの奇数」は、たとえば{3,5,7}のようなものを指します。5は3の直後の奇数、7は5の直後の奇数です。

{}内の「3の倍数」は聞き馴染みがあるとは思いますが、今一度どういうものか考えてみましょう。例を挙げるならば、3,6,9,12など。これを何を以て3の倍数とするかですが、ここでは次のように解釈します。

3×整数の形で表せるものを3の倍数とする」

現に3=3×1,6=3×2,9=3×3,12=3×4ですね。3の倍数と言われて思いつく数字は漏れなくこれに当てはまるでしょう。ですよね?

ここで再び『』に戻ってきます。「連続する3つの奇数の和は3の倍数になること」とは何か、例を挙げてみます。{3,5,7}は連続する3つの奇数です。和というのは足し算の答えのことなので、これを足すと、3+5+7=15。15=3×5なのでこれは3の倍数です。では、「{3,5,7}は連続する3つの奇数です。和というのは足し算の答えのことなので、これを足すと、3+5+7=15。15=3×5なのでこれは3の倍数です。」と書いたら「連続する3つの奇数の和は3の倍数になること」の説明になっているのでしょうか。

残念ながら、なっていません。

「連続する3つの奇数の和は3の倍数になること」という文には実は書かれていない隠れた意味があって、「どのような連続する3つの奇数を持ってきても、それらの和は3の倍数になること」と言った方が正確です。{3,5,7}の和が3の倍数であっても、何らか別の連続する3つの奇数を持ってきて、和が3の倍数でないということがあっては困るのです。

では、これを説明するためにどうするか、ここで文字を使います。

使う文字は何でもいいのですが、使う人が多いのでnを使います。このnを「整数」として扱います。イメージ的には「あらゆる整数の可能性を持ったトークンやみがわり」みたいなものです。

これを使って『あらゆる「連続する3つの奇数」』を網羅します。その方法を説明します。既にそれなりの長さになってしまっていますが、もうしばらくお付き合いください。

「連続する3つの奇数」を表すのは少し難しいので、先に比較的簡単な「連続する3つの整数」、「連続する3つの偶数」を表す方法から書きます。

「連続する3つの整数」は3つの数からなります。その一つ目は整数ならなんでもいいので、n(整数みがわりトークン)を置いておきます。二つ目ですが、これらは「連続」していないといけません。なので二つ目の整数は「nの直後の整数」でなくてはなりませんね。整数というのはご存知の通り、......-2,-1,0,1,2......、という風に並んでいますね。この並びを見るに「直後の整数」は「より1大きい数」と見なしてもよさそうです。つまり、nの直後の整数は「n+1」、三つ目については、n+1の直後の整数である「n+2」が適当です。したがって、「連続する3つの整数」は整数nを用いて、{n,n+1,n+2}と表せます。nに適当な整数を放り込むことで、あらゆる「連続する3つの整数」を用意することができます。

「連続する3つの偶数」についても同様にやります。しかし、一つ目に置く数は今回「偶数」でなくてはなりません。使えるのは整数みがわりトークンであるn、どうするか考えましょう。「偶数」は「2で割り切れる整数」で、これは「2の倍数」と言い換えてもいいです。つまり(先程の3の倍数のはなしを思い出して頂いて)、2×整数で表せる数ということになります。つまり、nを用いて2n(=2×n)は偶数といえます。一つ目を2nに決めました。二つ目以降ですが、今回は整数ではなく偶数です。偶数は、......-4,-2,0,2,4......、のように、整数の中でも1つおきに現れます。つまり「直後の偶数」は「より2大きい数」と見なしてもよさそうです。ということで、整数の時と同じようにして、「連続する3つの偶数」は整数nを用いて、{2n,2n+2,2n+4}と表せます。

満を持して「連続する3つの奇数」にいきましょう。「奇数」は「2で割り切れない整数」、つまるところ「偶数でない整数」です。ここで、整数の列を眺めているとあることに気付けるかもしれません。

......1,2,3,4,5,6,7,8......

当たり前に感じるかもしれませんが、偶数と奇数が交互に並んでいますよね。ということは、「偶数の直後の整数は奇数」ということも分かります。先程、偶数を2nと表しました。この直後の数、2n+1は、奇数を表せていることになります。奇数も偶数と同じように1つおきに整数に現れるので、「直後の奇数」も「より2大きい数」と見なせます。したがって、「連続する3つの奇数」は整数nを用いて、{2n+1,2n+3,2n+5}と表せます。

これで「連続する3つの奇数」を表せたので、準備は整いました。説明を書いていきます。

 

(説明) nを整数とすると、

 

最初の(説明)は正直あってもなくてもいいと思います。これから説明をしますよという宣言だと思ってください。大事なのはその次で、「nを整数とする。」は不可欠です。なぜなら、この後に先程nを使って表した「連続する3つの奇数」が登場するのですが、このnは問題文「連続する3つの奇数の和は3の倍数になることを説明せよ。」には全く出てきません。我々解答者が勝手に用意したものです。なのでnとは何かの説明をしなければなりません、採点者は答案は読めても我々の心の内は読めませんので。

 

連続する3つの奇数は、2n+1,2n+3,2n+5と表せる。

 

登場人物の紹介です。この2n+1,2n+3,2n+5があらゆる連続する3つの奇数をレプリゼントしてくれます。そうしたら、問題にはこの和が登場するので、和を取っていきましょう。

 

 (2n+1)+(2n+3)+(2n+5)

=6n+9

 

ここは特に説明することもないでしょう。もちろん途中式を挟んでもいい。

 

=3(2n+3)

 

大事なのはこの部分。我々は「連続する3つの奇数の和は3の倍数になること」を説明しなければいけません。「連続する3つの奇数の和」は6n+9でしたが、このままでは3の倍数になることの説明としては不十分で、先程の「3×整数の形で表せるものを3の倍数とする」という解釈に則って、3×整数の形で表してあげます。

 

2n+3は整数なので、3(2n+3)は3の倍数になる。

従って、連続する3つの奇数の和は3の倍数になる。

 

3×整数の形で表しているので、()内が整数であることまで言えば3の倍数であることは疑いようがないでしょう。(連続する3つの奇数の和)=(2n+1)+(2n+3)+(2n+5)=3(2n+3)⇒(3の倍数)なので、最終行の主張が正当化され、説明が完了します。

テキストの証明と一字一句同じ文面ですが、こうしてみると無駄が一切ないことがよくわかると思います。本編は以上です。

 

 

この議論でこの問題をこう解答することが絶対正しいとは言いません。今思えば、ところどころ端折ったり柔らかい口調で説明したとはいえ中学生にこの解説をしたのは不適切かもしれませんが、幸いにも聞いてくれている生徒は説明中頷いてくれて、その後の演習も正しく解けていたので私も精神を保てていますが。

中学2年のこの単元は説明(のちに証明となる)の最初の段階です。この段階からこのように論理的に証明を組み立てて書ければ、後の証明を用いる単元や高校数学で高い段差に躓くことも減るのかなと思い書きました。

数学は地続きの学問なので、アルバイトや自身の学習でこういうところを大事にしていけたらなと思っています。

 

有識者各位につきましては、一部議論、定義が曖昧であったり甘かったりする部分をお許しください。

 

ここまで長文を読んで頂きありがとうございました。